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日本薬科大学

「風が吹くだけでも痛い」と言えば?

  2020.1.15

「風が吹けば桶屋が儲かる」は日本語のことわざで、ある事象の発生により、意外なところに影響が出ることの喩えですが、今回は同じ風でも「風が吹くだけでも痛い」という話題です。健康診断で尿酸値が高いと指摘された方は特に要注意。それ、放っておくと、ある日突然痛い目にあいますよ!という事で、今回は尿酸と痛風の関係についてお話しします。


 



 


さて、この痛風の原因になる尿酸ですが、尿酸値が高くなってしまう理由として良く知られているのが「プリン体」という物質です。尿酸はプリン体が体内で分解されてできる老廃物なのですが、実は多くの動物は尿酸を分解してしまう素晴らしい仕組みを体内に持っているため、尿酸値が上がることはありません。がしかし、およそ1500万年前の我々のご先祖様に遺伝子の変異が起こり、ヒトやチンパンジーなどの霊長類は尿酸の分解が出来なくなってしまいました。これは霊長類が背負った負の遺産にも思えますが、実は進化には有利に働いたと考えられています。例えば、霊長類の最大寿命と尿酸値を比較すると、尿酸値が高いほど長寿命であることがわかっています。老廃物なんて言ってしまいましたが、実は良い面もあるのです。でも、なぜチンパンジーやゴリラは痛風にならないのでしょうか? ヒントは彼らの生活にあります。彼らは私達と違って美味しいものをたらふく食べたりしませんよね。それに肥満の野生動物なんて見た事ないでしょう? そして、彼らはお酒も飲まないですよね?


 


そう、痛風には肥満が大きく関係しています。肥満になるとインスリンが過剰に作られるようになります。このインスリンが腎臓からの尿酸排泄を抑制する方向に働くことが、尿酸値上昇の原因なのです。


もう一つは尿酸の排泄異常です。体内に溜まった尿酸を上手に排泄出来れば良いのですが、排泄する仕組みの異常(体質)がかなり多いことが最近の研究で明らかになってきました。


さらに、尿酸値の上昇に影響するのがお酒です。皆さんはプリン体が少ないビールや、焼酎のような蒸留酒であればセーフといった話を聞いたことはないでしょうか? 残念ながらこれは大きな間違いです。お酒好きな方には残念なお話しなのですが、お酒に含まれているアルコールが、腎臓から尿酸が排泄されるのを抑えてしまうので、どんなお酒でも尿酸値を上げてしまいます。


 



 


このようにして尿酸値が高くなると、痛風の原因となる尿酸の結晶が体内に生じやすくなります。特に、夏は汗をかきやすくなることと、尿量が減ることが重なって、「痛風発作」を起こしやすくなります。そして、今の時期も要注意です。尿酸は気温が低くなると足先などで結晶化しやすい事と、年末年始の暴飲暴食も引き金になるからです。いずれにしても、歩けなくなるような痛みが足先に襲いかかります。また、尿酸値が高い状態をそのまま放置していると、糖尿病や高血圧症、さらには脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まってしまいます。


 


では、このようなリスクを未然に防ぐためにどうすれば良いかというと、まず体重を落とす事がとても大切です。体重が落ちれば、痛風以外の脂質異常症や糖尿病といった生活習慣病全般にも良い影響を及ぼします。それと、最近の疫学的調査で牛乳やヨーグルトなどの乳製品に尿酸値を下げる効果がありそうだという事もわかってきました。最後にお酒ですが、このような話題を提供しても「よし、今年から禁酒しよう」とならない事は私もよくわかります。なぜなら私もそうだからです(笑)。 ですから、お酒の目安について申し上げると、日本酒に換算して1日1合程度が適量とお考え下さい。


 


せっかくの年初めです。尿酸値の高い方は生活改善によるダイエットを今年の目標にしてはいかがでしょうか?!


ワタシ? ガンバリマス!


 



 


日本薬科大学 生命医療薬学分野 教授


井上 俊夫