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日本薬科大学

やけどの新しい治療法「うるおい治療」について

  2019.7.10

私たちは日々、卒業研究指導の中でいろいろな文献を読んでいます。その中でやけどの新しい治療法が提案されていることを知りましたので、紹介させて頂きます。これは湿潤療法、閉鎖療法などと呼ばれるものですが、以下はわかりやすく表現するために、「うるおい治療」とします。


 


従来、やけどをすると、「消毒し、ガーゼを当てて、乾かして」治療していました。この方法ですと、カサブタができて傷は早く塞がるのですが、場合によっては大きな傷跡が残ることがあります。


 


一方、「うるおい治療」では、やけどの皮膚を「消毒せず(水で洗い)、乾かさない状態のまま」最後まで治療します。皮膚を乾かさずに(「うるおい状態」を保ったまま)治療すると、乾いたガーゼを当てて皮膚を乾かし、かさぶたを作らせて治療したときと比べて、日数はかかるものの、結果的に皮膚がキレイに治ります。


 


日本熱傷学会の診療ガイドライン改定第2版(2015)の「Ⅱ度熱創傷」に対する生野らの報告によると、「うるおい治療」のメリットとして次のようなことがあげられています。


 


①やけどの皮膚を確実に保護できる


(注:ガーゼだと、交換の際に皮膚を傷つけやすい)


②ガーゼを交換する場合より、うるおい治療用シートを交換する方が回数が少なくてすむ


(注:汚れたら交換する。通常1日1回程度交換すれば良い)


③傷が治りやすい


(注:やけどが軽傷であれば、ガーゼ治療より早く治癒する場合が多い)


④傷跡が残ることを予防できる


(注:やけどが重症の場合は、ガーゼ治療と比べて治るのに日数がかかるが、傷あとは残りにくい)


 


従来、ガーゼで乾燥させる治療では傷の「ジュクジュク(=傷からの浸出液)」は悪者とされていました。しかし近年この「傷からの浸出液」には自らが作り出した細胞増殖因子が含まれており、皮膚が「キレイに治る」ことを促進することが判ってきました。(下図参照)


 



 



 



 



 


やけどした直後は、本当にキレイに治るのか悲観的になってしまいがちです。しかし現在、やけどの治療がどのような経過をたどるのか、3000例以上の症例が写真で公開されています。症例によっては、やけど直後から数年後まで追跡した写真もあります。やけどした直後の写真からは想像できないくらい、傷跡ひとつ無く治っているケースも多々あります。


 


 


 


また、一見同じような重いやけどであっても、やけどの温度によって治り方に差があることも判ってきました。同じやけどでも、高温(服に引火・油料理・アイロン)や低温かつ長時間(温熱カイロ・湯たんぽ)でのやけどより、中程度の温度(100℃前後の熱湯)のやけどの方が格段に治療成績は良いようです。なぜこのように中程度の温度によるやけどの治療成績は良いかは不明ですが、治療経過の観察から、「100℃前後の短時間のやけどでは、皮膚の毛包の細胞が生き残っており、そこから皮膚が再生するから」ではないかと考察されています。


 


今後、うるおい治療でキレイに治った症例が蓄積し、やけど以外の様々な「傷」にも適用拡大され、様々な臨床系の学会のガイドラインで推奨されていく時代が来つつあると感じます。


 


 


 


日本薬科大学 分子機能科学分野 准教授


土田和徳


 


 


 


 


参考文献


(1)Ⅳ-2.初期局所療法(創傷被覆材) 1.Ⅱ度熱傷創 社団法人日本熱傷学会熱傷診療ガイドライン[改訂第2版](2015)p51-54


 


(2)生野久美子ほか、創傷被覆材を用いた熱傷治療―早期ocurring dressingの有用性の検討 日小外会誌(2008) 44, 2 p112-117


 


(3)小野一郎ほか 皮膚浸出液中の成長因子、cytokine含有量に関する研究、 福島医学雑誌(1994) 44(4) p261-266


 


(4)新しい創傷治療  http://www.wound-treatment.jp/