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日本薬科大学

漢方を使って猛暑を乗り切りましょう。

  2019.6.26

日本の気候は年々暑くなってきています。気象庁のデータによるとこの100年で平均気温が1.19度上昇しているそうです。世界平均では0.72度の上昇ですから日本は世界でも気温上昇が激しいと言えます。特に1990年以降から急激に上昇しています。二酸化炭素などによる温室効果ガスの影響や、数年から数十年に渡っておこる自然変動が重なっていると考えられています。また、それに伴い熱帯夜、真夏日、猛暑日の日数も多くなってきており、熱中症患者が増加してきています。


 


熱中症は気温が高ければ発症しやすいということは容易に想像が出来ることですが、梅雨の晴れ間、梅雨の合間など急に気温が高くなった時にも発症頻度が上がります。この時期は身体が暑さに慣れていないために汗をかくなどの体温を冷やす機能が上手に働いていないのです。真夏になる前にも注意が必要です。


 



 


熱中症は軽症から重症になるに従ってⅠ、Ⅱ、Ⅲ度と分類されています。めまい、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直、こむら返りなどが起こり、安静、冷却、水分や塩分を口にすることで回復する程度であればⅠ度です。頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下などが起きてくると重症度が上がり、医療機関での診察が必要なⅡ度と考えられます。すぐに病院に行きましょう。さらにひどくなり、意識障害などが起きてきた場合(Ⅲ度)には救急車を呼びましょう。意識障害などが起きた場合には漢方は使えませんが、軽度の熱中症であれば回復を助けてくれます。例えば水を飲んでも胃の中でちゃぽちゃぽするだけで、うまく吸収できていない感じがするときには「五苓散(ごれいさん)」が役に立ちます。また暑くて口渇があり、水をがぶがぶ飲むような状態の時には体を冷やし、失った水分を潤すような「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」が良いでしょう。


 



 


熱中症は急激に体温が上がってしまった時に起こる症状です。熱中症のようにひどい状態にならなくとも暑さで身体の調子が悪くなり、寝汗が出たり、食欲が無くなったり、下痢が続くようなことがあります。これは夏バテです。これに対しては西洋医学的にはあまり出来ることがありません。消化を助けたり、腸内環境をよくしたりする程度でしょう。


 


しかし、漢方薬は違います。バテてしまって困った時にはその人の体質を考えながら「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」「白虎加人参湯」「五苓散」「啓脾湯(けいひとう)」などを使います。


 


「清暑益気湯」は「白虎加人参湯」よりもやや虚証(*)の方によく用います。消化機能を助け、体にこもった熱を冷まし、脱水気味の身体を潤す作用があります。もともと冷え性の方は汗をかくことが得意ではありません。汗をかいた後に爽快感がなく、ぐったりと疲れてしまうような汗をかいてしまいます。そのような方によく使う処方です。「白虎加人参湯」はそれよりもやや元気な方で体に汗をよくかきますが、熱がこもっているような状態のときに用います。「五苓散」は体内の水のバランスを整える薬ですので、脱水、むくみ、頭痛、倦怠感、めまいなどに用います。「啓脾湯」は下痢の薬です。食あたりではなく、おなかに食べたものを健全に吸収して排泄するエネルギーが足りないような時に用います。原因不明でずっと下痢が続いているような時に劇的に効くことも多い優しい薬です。


 


体調に合わせて漢方を使い分けられるといつもよりも楽に夏が過ごせるようになります。湿気の多いこの季節を乗り切り、是非、楽しい夏休みをお迎えください。


 


 (*)虚証:漢方で、体力・気力が衰え、顔色も悪く、疲れやすく脈も弱々しい状態。


 


 



 


 


日本薬科大学 漢方薬学分野 教授


医師・薬剤師


橋本 寛子